![]() 携帯のアラーム、鳴り響くは大好きなバンドの曲。 一つ目はsunrise、二つ目は花想。 三つ目は爆音サウンドのチェスト。 すれ違いざま―第七話― 自分で設定したはずの爆音サウンドにガバッと起き上がった。 携帯を手に持ったまま顔の近くまでもっていっていたようだ。 耳に入ってきた突然の音が頭をガンガンと打つ。 携帯で時刻を確認すると丁度午前八時を回ったところだった。 あたしはベッドから降りて洗面所に向かい顔を洗い、つけっぱなしだった使い捨てコンタクトレンズを捨てて新しいコンタクトレンズを付けた。 まだ少し虚ろな目のまま歯を磨く。 しゃこしゃこと磨きながらリビングのテレビを付けると知っている曲が聞こえてきた。 ――君の瞳に恋してる 俺の青春プレイバック――夢人だ。 女子アナウンサーが何やら話しているバックサウンドとして流れている夢人を耳に入れながら歯磨きを済ませた。 夢人は弘樹のパートに入った。 そこであたしは昨日の出来事を鮮明に思い出し頭を覚醒させた。 ともか「あっ!」 急いで自室に向かうとあたしはベッドの上に放置された携帯を手に取った。 電話帳を開き『外間弘樹』の文字を探す。 あたしはその文字を見つけるとホッと胸を撫で下ろした。 ――よかった、本当に夢じゃない。 そのままメール機能を起動し、新規作成メール画面を出した。 もちろん宛先には弘樹のアドレスを入れて本文を打つ。 だがあたしの親指は止まったまま動かない――…何と打とう。 とりあえず件名に「水野ともかです。」と打ち込む。 しかし本文に何を打ったらいいか迷ってしまって件名を打ったきり動く気配のないあたしの親指。 うーんうーん、と考えだしてできたのはたった二文だけ、しかもありきたりな。 ――「昨日はありがとう!これからもよろしくお願いします!」―― 短すぎるかなぁ、と思いつつもそれ以上何も思い浮かばなかったあたしはそのままメールを送信した。 送信完了という文字を見てからパタンと携帯を閉じ、大学へ行く支度をするために携帯をベッドの上に投げ置き、タンスの中から適当にTシャツとデニムパンツを取り出す。 それらにちゃちゃっと着替え、クローゼットの中から黒のコートを取り出し、机の上に無造作に置かれているバッグに授業に必要なものを入れ、携帯を持ってリビングに移動した。 現在午前九時ちょっと前。 ここあが迎えに来るまで二十分ちょっとある。 あたしは手に持っていたコートとバッグをリビングの椅子に、携帯をテーブルの上に置いた。 そのままキッチンに立つと水を沸かして紅茶を入れる準備をする。 一分後、十分な熱さであろうお湯を紅茶パックの入ったカップに注ぐ。 ミルクと砂糖を右手に持ち、左手でカップを持った。 歩くたびに波打つ紅茶に気をつけながらテーブルに置き椅子に座ってテレビの方を向いた。 ニュースは相変わらず物騒極まりない殺人事件だとかを取り上げている。 あたしはカップにミルクと砂糖を入れ、ごくりと紅茶を飲む、丁度良い甘さだ。 カップ片手にチャンネルを変えてみるがどこのテレビ局も同じようなニュースばかりで興味を引くような番組はない。 ともか「ここあ、まだかなぁ。」 テレビ画面に映る時刻を見て呟いてみても、もう両親は仕事に出ていてあたししかいない部屋からは返答などあるはずがなかった。 ここあにメールしようとした時グッドタイミングでチャイムの音が鳴った。 あたしはカップに残っている紅茶をぐいっと飲み干し、コートを着てバッグを肩にかけると携帯をコートのポケットに突っ込み、カップをキッチンの流し台に置いて玄関に続く短い廊下をぱたぱたと走った。 玄関に出されたままのスニーカーの一つを履いてドアを開けた。 ここあ「おっはよーともか!二日連続遅刻ごめーん!」 ドアを開けるなり朝とは思えないハイテンションでそう言うここあ。 大学で初めて出会った時もこのハイテンションさで、初めこそ煩いなぁ、と思っていたが今ではこれもここあの良いところであると気づいた。 それでもやはり朝からは遠慮したいとも思うが…。(だって耳と頭に響く!) あたしはドアの鍵を閉めてからここあの言葉に「ん、いいよ。いつもあたしが遅刻してるし。」と返した。 ここあ「ともかって予定ない日とかずっと寝てるもんね。」 ともか「別にずっとじゃないって。ちゃんとご飯食べてるし。」 ここあ「あははは!寝てるのは否定しないんだ!そんなんじゃ洋みたいだよ〜(笑)」 歩きながら話していたがあたしはここあの言葉にビクッと体を跳ねらせて足が止まってしまった。 そして次のここあの発言にあたしは冷や汗をかき始めた。 ここあ「なに、もしかして私に隠し事〜?」 ともか「か、隠し事なんてないよ!気のせいだって。」 ここあ「嘘だー!洋に反応したってことはRANGE関係でしょ!さてはもしかして…。」 もうあたしの心臓はドキドキだ。 明らかに昨日とは違った焦りと緊張からなるドキドキだ。 ここあは時間にきちっとしてはいるが普段はのんびりとしている。(普段がのんびりしているのに何故あんなにハイテンションなのかはここあの七不思議の一つだったりする。) それなのに変なところで妙に勘が鋭くなるのだ。(そしてこれが七不思議の二つ目。) その勘の鋭さが今ここで発揮されるんじゃ…とあたしはヒヤヒヤしながらここあを見つめた。 そしてここあの口が再び開かれた――ごくりと息を飲む。 ここあ「あれでしょ!弘樹から洋に心変わりしたんでしょー!」 ともか「あ、あたしはずっと弘樹だし!」 反射的に声を大にしてあたしはそう言っていた。 ハッとして隣を歩くここあを見ると「あはははは!!」と大爆笑している。 笑いが収まると「冗談だよ(笑)どうせRANGEの夢でも見たんでしょー。」とここあは言った。 要らぬ恥をかいたが何はともあれ昨日のことはバレていないようだ。 実はリビングでここあを待っていた時、内心昨日のことがバレていないだろうかとヒヤヒヤしていた。 ここあが借りている部屋は偶然にもあたしの家の斜め向かい側にある。 それにここあはいつも何かしらの理由で夜遅くまで起きている。 だからもしかしたら夜中、マンションの前で弘樹と話しているのを目撃されたかもしれないと焦っていた。 あたしの予想は嬉しくも外れていた。 思わずホッと胸を撫で下ろした時、コートのポケットに入っている携帯から着信音が鳴りだした。 慌てて携帯を取り出しディスプレイを見る。 新着メールを知らせるアイコンを押し、誰からのメールなのか確認する。 そこには予想と期待通りの人物の名前が表示されていた。 ――From:外間弘樹 件名:朝早いね〜! 本文:おはよう。昨日は楽しかったよ!ありがとう! 今日確か学校だよね?結構遅くまで付き合わせちゃったけど大丈夫?―― 相手を気遣う弘樹らしい内容に思わず頬が緩む。 そんなあたしに気づいたのかここあがあたしの携帯を覗き込もうとしたが、あたしの携帯画面にはブロックシールが貼ってある。 やはり何も見えなかったらしくここあはあたしの頬をつんつんと軽く突いた。 ともか「なに?」 ここあ「誰からのメールだったのー?」 ともか「友達から。(嘘は言ってない多分…)」 ここあ「今日二回目の嘘ついたー!ともか、めっちゃニヤけてたじゃんか!」 ともか「(また変なとこ見たな…)ちょっと面白いことが書かれてあったからさ。」 ここあ「んじゃあ見せて!」 ともか「それはちょっと…。」 ここあ「いいじゃーん!今までだって見せてくれたことあったんだしっ!」 あたしは必死にいい嘘、もしくは言い訳がないか頭をフル回転させた。 ここあが納得することとなるとやはりRANGE関係になってしまう。 だが本当のことを言うわけにはいかない。 言うとしてもあたし一人で決めていいことではないし、弘樹本人や他メンバーの許可が必要だろう。 考えを巡らせつつ歩みを止めずにいたお陰で大学の近くまで来た。 相変わらず隣でここあが「ねぇメール〜。」とせがんでいる。 はぁ、と小さく溜息をつき、結局考えがまとまらず「個人的なメールだから見せられないの。ごめんね。」と言った。 あたしの言葉にここあはむっとした顔をしたが直ぐにしょぼんとして「んーん。私こそごめんね。」と言った。 あたしはいつもここあが凹んでる時にやるようにここあの頭を軽くわしゃわしゃと撫でて「早く教室行こう。」と言って、ここあの肩を押した。 教室に入るといつも座っている席に腰を下ろした。 バッグの中から筆記用具とノート、教科書を取り出す。 席に座ったまま暫らくここあと他愛のない話をしていると教室のドアが開き、教授が入ってきた。 教授が教卓につくと今日もいつものように出席を取らないまま授業が始まった。 ここあは黒板に書かれた文字をノートに書き取り、黒板に書かれていない補足説明をする教授の言葉を一字一句聞き逃さないようにし、自分なりに言葉をまとめノートに書き足している。 そんなここあをよそにあたしは携帯を取り出し、さっき来た弘樹からのメールに返信をした。 するとすぐに授業前にマナーモードにした携帯からブーブーとバイブレーションの音が鳴った。 差出人は弘樹で「授業中じゃないの?メールしてて平気?」とまたもや気遣う文章と「今度はいつ会えるかな。」といった文章が書かれていた。 カチカチとメールの返信をしているとここあがじとー、とあたしを見ていることに気づき小さな声で「なに?」と言った。 ここあ「ノート取らないの?」 ともか「あー…ここあ、ノート貸し――」 あたしの言葉を遮ってここあは「えーまたぁー?」と不満の声を漏らした。 あたしはそんなここあに「お願い!あたしも世界史のときはノート貸すから!」と言って頼み込むと、ここあは渋々頷いてくれた。 ここあがまた黒板の方を向いてペンを忙しなく動かしているのを確認してから途中までしかできていないメールの返信の続きをする。 ――「大丈夫、友達がいるから(笑)んー…あたしは余程のことがない限りはいつでも平気だよ。弘樹は仕事とあるんじゃないの?」―― 平然と弘樹にメールを返信している自分にフッと小さな笑いが漏れた。 昨日の今日であんなにも遠く離れた人だと思っていた弘樹が今では昔から知っていたんじゃないかと思えるぐらい近い人になりつつある。 「偶然ってすごいなぁ…。」と小さく呟くとここあがキョトンとした顔をしてあたしを見た。 ともか「運命だったらいいのにね。」 あたしがここあの方を向いて控えめに微笑みながら言うと、ここあは益々キョトンとしただけだった。 一日の授業も全て終わり、生徒が思い思いに大学を後にする。 あたしとここあも大学を来た時と同じように二人で帰り道を歩いていた。 学校であったことや他愛のない話をしながら歩いていると突然あたしの携帯が鳴りだした。 特別、急用な時以外電話をしないあたしは着信音を聞いても電話だと気づかずにメールなら直ぐに鳴り終わるだろうとそのままにしておいた――が、着信音は鳴り止まない。 メールの着信音ってこんなに長かったっけ、と不思議に思っているとここあが「電話出ないの?」と言った。 普段電話をしないだけにメールだと疑ってやまなかったあたしはここあの一言でやっと電話の着信音だったのだと気づいた。 急いで携帯を取り出しディスプレイを見るとそこには外間弘樹の文字。 突然の電話に、しかめ相手が弘樹。 そして隣にはまだ何一つ話していないここあ。 電話に出ようか出まいかと悩んでいると着信音が鳴り止んだ。 ここあにバレなかった安心感と電話に出なかったという弘樹への罪悪感ではぁ、と溜息をついた。 ここあ「出なくて良かったのー?私に気遣って出なかったとかじゃないよねー?」 ともか「ああ…うん、別にそんなんじゃないよ。急用だったらまた電話かかってくるだろうから大丈夫だと思う。」 ここあ「ほんとに大丈夫ー?結構長かったじゃん、呼び出し音。」 ともか「うーん、まぁ何とかなるって。だいじょ――〜♪♪♪ あたしの言葉を遮るようにしてまた携帯が鳴りだした。 ディスプレイを見るとやはり外間弘樹の文字が映し出されている。 どうしよう…と考えているあたしにここあが「出ちゃいなよー急用だったら可哀相だよ。」と言った。 その言葉にやっと決心をして電話に出た。 バレたらバレた時に考えればいい。 弘樹『もしもーし?ともかー?』 ともか「はい、もしもし。何か急用でもあったの?」 弘樹『急用っちゃ急用かな。』 ともか「なに?今友達といるからバレないようにしたいから早めにお願い。」 弘樹『ああ!もしかして俺のこと話してないの?』 ともか「うん。話したらマズイと思って。」 弘樹『そっかそっか!ごめん、色々と。』 詫びるように言う弘樹に「気にしなくていいよ。」とだけ答える。 ふと隣を見るとここあが口パクで「誰からだったの?」と言った。 どう答えたらいいかわからず、あたしも口パクで「友達。」と答えた。 ここあは納得のいってないような表情を浮かべながらも「ふーん。」と言った。 ともか「それで急用な話って?」 弘樹『ああ!忘れるところだった!そうそう、実は今ともかの家の前に来てるんだけど。』 ともか「えっ!?」 弘樹の発言に思わず大きな声を上げた。 ここあを見ると「どうしたの?」と怪訝そうな表情をしている。 あたしは見てみぬフリをして電話越しの弘樹に「ごめん。」と謝罪した。 弘樹『俺も急なこと言っちゃったから。もしかして来たの迷惑だった?』 気遣うような弘樹の声音にとてもじゃないが迷惑だなんて言えそうにない。 だがしかし、あたしの家はここあの家とかなり近い。 このままではゴタゴタになるのが目に見えている。 ともか「あー…いや迷惑とかそんなんじゃないけど…。」 弘樹『けど?』 ともか「ちょっとマズイかも。今一緒にいる友達の家、あたしの家とすごく近いの。だからこのままだと…。」 少し声を落としてそう言うと弘樹が小さく「やべ…。」と言ったのが聞こえた。 弘樹『じゃ、じゃあともかの家の先にあるレストランの近くに車停めてるから来れる?』 ともか「わかった。用事できたとか言ってそっち向かうよ。」 弘樹『ほんとごめん!それじゃあ先に行って待ってる。急がなくていいからね。』 弘樹はそう言った後電話を切った。 あたしは携帯を閉じると時刻を確認した――十九時二十一分、レストランまでは少しだから十分ぐらいで着くだろう。 携帯をしまうと同時にここあが「何だってー?」と言った。 ともか「何かかなりの急用らしくて今から会えないか、だって。」 ここあ「もしかして男ー?」 ともか「先輩だけどね。近々何かやるとか言ってたから多分その件だと思う。」 ここあ「そっかぁ。じゃあ直ぐに行ったほうがいいんじゃない?」 ともか「かもしれない。けど…。」 ここあ「私のことならいいって!相手待たせちゃ悪いから早く行きなさーい!」 何か勘違いをしているらしくここあは茶化すように言った。 何だかなぁ…と思いながらもここあに「ごめん!んじゃまた明日!」と言った。 背中越しに「頑張ってねー!」とまたしても茶化すように言うここあの声を聞きながら足早にその場を後にした。 BACK NEXT ***後書きと書いて反省と読む*** 今回は短めで。決してネタがなかったからとかそんなわけじゃないですよっ!(笑) 次回からちょっと書き方変えます。見づらいようであれば言ってくださいね。 さて弘樹さんがヒロインを呼び出した理由とは一体…。 誤字・脱字を発見された方はこっそりとコメントにてご報告お願い致します(ペコッ) お題配布サイト:リライト様より「ラブラブの二人への○○の行動」 |
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待ってました〜!!!そして一気にこんなにお疲れ様です>< |
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弘樹大好き! |
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Dane 2007/09/12 23:10 |
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